山から渓へ

【鬼怒川本流】
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 私が初めて渓流魚を手にしたのは、全くの偶然でした。20~30歳代は山歩きに夢中でした。その時も大井川源流の椹島から入山し荒川岳赤石岳聖岳を縦走、茶臼岳から上河内沢を下山中、最後の宿泊地が無人のウソッコ沢小屋でした。
 
 小屋前の沢で夕食の準備中、目前の大渕でバシャンとライズする魚影。急いでザックに忍ばせていた粗末な竿を取り出し、山小屋の庇にあったアシナガ蜂の巣を叩き落して餌を調達。乏しくなった食糧に一品加えようと、暗くなるまで粘ったのですが全く魚信なし。
 空腹に負け夕食を摂り、ヘッドランプの明かりを頼りに食後の片付けを済ませ、岩に挟んで置いた竿を上げようとした瞬間、真っ暗な大渕に引き込まれるような強烈な手応え!!だったように記憶しています。夢中で川岸へ引きずり上げた大アマゴ。ヘッドランプに浮かぶ鮮やかなパーマーク、適度に散りばめられた朱点、一瞬で尺アマゴに魅せられてしまったのです。
 
 その後同僚を誘い、畑薙第一ダムに架かる大吊橋を渡って、何度も入渓したのですが殆ど釣果なし。それからが試行錯誤の連続、山より釣りが優先するようになり、源流を目指し危険な沢へも入るようになっていました。しかし手にするのはいつも小型を数尾。そのうち東京へ転勤となり数年渓から遠ざかる事になりました。
 
 その後、渓流釣りの超ベテラン静岡のSさんと懇意になり、何度か同行、目から鱗が落ちました。私のゴツイ仕掛と釣り竿を見たSさんは、黙って道具一式を貸してくれたのです。軽い竿、繊細な仕掛、小さな釣鉤、私が源流を目指しても釣れなかった理由が一目瞭然でした。最初の一尾が、ビギナーズラックに過ぎなかったことも痛感しました。
 
那珂川本流】
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